「AIって、実際使えるんですか」
経営者の方からこう聞かれたとき、私はいつも「使えます。ただし失敗の仕方がだいたい決まっています」と答えています。
先に立場を明かしておくと、Basiyは業務のかなりの部分をAI(主にClaude Codeという開発・業務支援のAI)で回している会社です。そして少し変わった習慣があって、AIとの仕事で起きた失敗を、種類ごとに記録簿につけています。2026年9月時点で28種類。同じ失敗は1つにまとめてのカウントなので、のべ回数はもっと多いです。
この記事で書く「失敗する会社の共通点」は、他社を観察した話ではありません。全部、Basiyが先に踏んだ失敗です。だからこそ、これから始める方には避け方をお伝えできます。
共通点1: 丸投げする
いちばん多い誤解が「AIに任せる=全部お任せ」です。私も最初はそちらに寄っていました。
先日、9万個を超えるファイルで散らかった自社のクラウドフォルダを、AIと一緒に半日で6千個まで整理しました。このときうまくいった理由は、丸投げしなかったことです。「このフォルダはもう使わない」と決める判断は私がやる。決めたあとの中身の調査、移動、消していいかの照合は、AIがやる。人間は判断、AIは大量の確認作業という分担です。
逆にすると悲惨です。判断をAIに任せると、AIは私に確認の質問を重ねてくるので、かえって遅くなります。1万個のファイルの突き合わせを人間が目視でやれば、日が暮れるうえに必ず見落とします。どちらが何を持つかを決めずに「いい感じにやって」と渡すのが、丸投げの正体です。
共通点2: 失敗を仕組みに変えない
AIは間違えます。ここは断言します。使い込んでいるうちほど、間違いに出会う回数も増えます。
分かれ目は、間違えたあとです。自社の実例をひとつ。ファイル整理の作業中、AIに任せた読み取り作業が40分経っても終わらないことがありました。原因を調べると、クラウド上のファイルの中身が手元になく、ダウンロード待ちで止まっていた。そこで「読み込みに30秒以上かかるファイルは飛ばして続行する」というルールをAIへの依頼文に必ず入れる決まりにしました。数時間後に同じ作業をやり直したら、4分で終わりました。
冒頭の記録簿は、この「失敗をルールに変える」ための道具です。人間のうっかりと同じで、AIの失敗も放っておけば何度でも起きます。記録して、依頼の仕方を1行変える。それだけで同じ転び方をしなくなります。失敗をその都度の不運として流している限り、AIは「たまに変なことをする不安なやつ」のままです。
共通点3: 「できました」を確かめない
AIは自信満々に「できました」と報告してきます。そして、その報告が間違っていることがあります。
Basiyの記録簿には、「元の記録は消さず追記だけした」と報告しながら、実際には既存の記録を書き換えて一部を消していた、という失敗が残っています。以来、自社では2つのルールを決めています。消す・上書きするなど戻れない操作は、実行前に対象の一覧を人間に見せて承認を取ること。そして完了報告は鵜呑みにせず、変更内容を機械的に突き合わせて確かめること。
大事なファイルを扱わせるなら、この検品の仕組みは最初に作るべきです。新人さんに大事な仕事を任せるとき、最初のうちは提出物を確認しますよね。AIも同じで、しかもAIは何年経っても「たまに自信満々で間違える新人」のままです。
性能の問題ではなかった
3つ並べて気付くのは、どれもAIの性能の話ではないことです。判断の分担を決める。失敗をルールに変える。報告を検品する。全部、任せ方の設計の話です。
そして設計の話だからこそ、規模は関係ありません。Basiyは静岡の小さな会社ですが、この3つを守るだけでAIは「不安なやつ」から「大量の作業を安心して渡せる相棒」に変わりました。導入を検討している方は、ツール選びの前に、この3つを誰がどう守るかから考えてみてください。
